(1)温度が高くなると化学反応(劣化)が速くなるので、温度はなるべく低い方が良い
10℃上がると化学的劣化速度が2倍となり、逆に10℃下がるとその速度は半分になるといわれています。具体的には、冬季の過剰な暖房は好ましくなく、また収蔵場所と閲覧場所の温度差が大きいと結露が発生する危険性があるため、その差は少ない方が良いとされています。
(2)湿度は50%RH程度で安定させる
湿度が50%RH前後で安定していると、紙の歪み(膨潤・収縮)が少ないため、接着部分の剥離や資料の反りなどの変形が発生しにくい。また、60%RH未満で安定していれば、カビが発育する危険性も少ない。本の構造や接着剤など紙以外の素材を一切考慮に入れなければ、紙の化学的安定と物理的形態の保持には、10℃以下で30~40%RHが理想とされています。また、羊皮紙(パーチメント/ヴェラム)が柔軟性を保持するには50%RH以上が必要とされています。
(3)紫外線・赤外線などの光を遮断/軽減する
紙そのものの劣化、紙上の色材などの褪色を避けるためには、光量(特に不可視光線)のコントロールを行う必要があります。紫外線に関しては紫外線カットフィルムや美術・博物館用の紫外線吸収膜の付いた蛍光灯を用います。また、近年は紫外線も赤外線もともに発生量の少ないLEDの使用も増加してきています。
(4)ホコリや生物の侵入を防ぐ
ホコリには、人間の皮膚や鉱物、植物、繊維、排ガス、指の脂、その他の有機物・無機物などが含まれます。ホコリは虫やカビなどの養分となり、また表面に付着した状態で温度や湿度、時間の経過とともに酸素や水分と結合すると、繊維そのものに深く入り込んだ形の染みや焼けになります。また、ホコリの多くは吸湿性(親水性)なので、ホコリに含まれる塩類による腐食、加水分解、酸の放出などの被害も考えられます。
(5)保管場所の空気の滞留を防ぎ、外気流入を控える
空気が滞留する場所では湿気が溜まりやすく、その結果カビの発生を促進させます。書棚の場合では、特に下段(床から30cmくらい)に湿気が溜まりやすいといわれています。また、外気には水分やカビ、大気汚染物質がより多く存在しているため、その流入はできるだけ避ける必要があります。